ソニー「α7 III」と「α9」を比較してわかった10の違い

ソニー「α7 III」と「α9」を比較してわかった10の違い

ソニーが、「α7 III」(ILCE-7M3)を3月23日に発売すると発表しました。α7 III は、ソニーの35mmフルサイズのミラーレス一眼の標準モデルです。立ち位置的にはこんな感じで、α7シリーズの最新機種になります。

 

【ソニー フルサイズミラーレス一眼のラインナップ】

α7 → 標準モデル(フルサイズの中では廉価)
α7R → 高解像度モデル(4000万画素以上)
α7S → 暗所に強いモデル(ISO102400以上)
α9 → 20コマ/秒の高速連写&AF追従モデル
    (α7シリーズよりも上位の最高スペック)

 

α7 III はソニーのフルサイズミラーレス一眼のベーシックモデルの最新機種になります。先行して発売されたα9 や α7R III に搭載された操作系や最新機能が搭載されて、実勢価格が25万円程度とシリーズの中では控えめなお値段が話題となりました。α7 III の約25万円(ボディのみ、税込み)も決して安くはありませんが、α9 が約45万円、α7R III が約37万円ほどであることから、これらのモデルに高くて手が出なかった人にも、お求めやすくはなっています。そこで、α7 III と最高スペックの上位モデルα9 との違いを比較してみました。

とその前にまず、共通するスペック(変わっていないところ)は下記になります。

  • デザインと重さ(α7 III が23gだけ軽い)
  • タッチフォーカス機能付き背面液晶モニター
  • ISO 100〜51,200、拡張 50〜204,800(ビデオは最大102400)
  • 5軸手ぶれ補正(最大効果 5.0段分)
  • 全画素読み出しの4Kビデオ(30fpsで1.2xのクロップ)
  • 大容量バッテリー(NP-FZ100)
  • デュアルSDカードスロット(1スロットのみUHS-II対応)
  • Wi-Fi、NFC、Bluetooth(ジオタグ)を搭載

「α7 III」と「α9」を比較してわかった10の違い

 

1.無音・無振動・アンチディストーションの「電子シャッター」

どちらのカメラも2,420万画素の裏面照射型のCMOSセンサーが搭載されており、通常のイメージセンサーよりも多くの受光を可能としています。しかし、α9はそれに加えてメモリーを内蔵した積層型構造のCMOS(Exmor RS)であることが特徴で、これにより段違いの処理能力を実現しています。α7 III もフロントエンドLSIチップを搭載していて、処理能力が旧モデルから約2倍に高速化していますが、それでもα9 には及びません。α9 はα7 IIIとの比較でも読み出し速度が10倍以上も速さです。

 この積層型CMOSによる凄まじいメリットを一つずつ紹介していきます。まず特筆されるのが「電子シャッター」の性能です。積層型CMOS(Exmor RS)の高速処理により、これまで電子シャッターの課題と言われていた「ローリングシャッター歪み」が発生しないことがα9のスゴさです。厳密には、完全に歪みが生じないグローバルシャッターではなく、読み出し速度を格段に上げたことで事実上歪みを発生しない(アンチディストーションシャッター)という扱いです。

電子シャッターとメカシャッターの違いとは?

メカシャッターとは、撮像センサーの前にあるカーテンのような幕(先幕と後幕の2つ)が、上がったり下りたしして、シャッタースピードや露出を制御する仕組みです。一眼レフのレフ板と同じように機械制御になりますので、スピードや振動などの物理的な制約を受けます。

 

次に、電子シャッターとは、幕を利用せずに、撮像センサーの電子的制御のみで、シャッターを切る仕組みのことを言います。機械制御の振動もなく、連写速度やシャッタスピードを高速化できるメリットがあります。

 
これまで電子シャッターは、「ローリングシャッター歪みがあるので使えない」といわれていました。しかし、α9では、電子シャッターでもローリングシャッター歪みをほぼ無実化し、デメリットをほぼ解決してしまったのです。
  
画素数のほか、5軸手ブレ補正やISO感度の性能は同じになります。
  α7 III α9
有効画素数 2420万画素 2420万画素
センサータイプ CMOS
(Exmor R CMOS)
積層型CMOS
(Exmor RS CMOS)
センサーサイズ 35mmフルサイズ
(35.6×23.8mm)
35mmフルサイズ
(35.6×23.8mm)
ISO感度
(拡張最高感度)
100〜51200
(50 / 204,800)
※動画は102,400まで
100〜51200
(50 / 204,800)
※動画は102,400まで
手ぶれ補正
(5軸 5.0段)

(5軸 5.0段)
画像処理プロセッサ BIONZ X BIONZ X

2.「20コマ/秒」の高速連写とバッファ

α9は、AF測距点が693カ所もあるにも関わらず、積層型CMOS(Exmor RS)の処理能力により、AF・AEの演算を最大で毎秒60回も実行しています。その結果、最速1/32,000秒の電子シャッターとの組み合せにより、無音・無振動で、20コマ/秒もの超高速連写を実現しています。Aマウントレンズ装着時も撮像面位相差検出AFで最高10コマ/秒連写が可能です。

一方、α7 III の連写性能は、メカシャッター、電子シャッター(静音シャッター)ともに、AF追従で10コマ/秒まで。α9とは異なり超高速の読み出しではないため、アンチディストーションではありません。電子シャッターではローリングシャッター歪みが生じやすいので、基本的にはメカシャッターを使い、静音で撮影した場合だけ電子シャッターを使うという運用になります。α9のメカシャッターは、最速1/8,000秒で、連写は5コマ/秒となっているのでメカシャッターの性能ではα7 III の方が高いことになります。

バッファメモリーもα9の方が大容量化です。LサイズのJPEG画像なら画質にかかわらず362コマまで、RAWでも241コマまで連続撮影が可能です。α7 III のバッファメモリ−は、JPEG画像なら177コマ、RAWなら89コマまでとなっています。

とはいえ、α9の性能が突き抜けすぎているところもあり、α7 III のメカシャッター10コマ/秒もフルサイズミラーレスの中では高速な方で、バッファーも十分な性能ではあります。

  α7 III α9
AF方式 ファストハイブリッドAF
(像面位相差+コントラスト)
ファストハイブリッドAF
(像面位相差+コントラスト)
測距範囲 -3EV〜 -3〜20EV
シャッタースピード
(メカシャッター)
1/8000〜30秒 1/8000〜30秒
電子シャッター
(サイレントモード)
1/8000〜30秒 1/32000〜30秒
電子先幕シャッター
フラッシュ同調速度 1/250秒以下 1/250秒以下
最大連写とバッファ
(メカシャッター)
10コマ/秒(AF追従) 5コマ/秒(AF追従)
最大連写とバッファ
(電子シャッター)
10コマ/秒(AF追従)  20コマ/秒(AF追従)   
連続撮影バッファ RAWあり: 89枚
RAWなし: 177枚
RAWあり: 241枚
RAWなし: 362枚

3.ブラックアウトなしのライブビュー、連続撮影

メカシャッターで被写体を追いながら高速連写を続けていると、ファインダーが高速で明滅するために目の負担を感じることもありますが、α9は完全ブラックアウトレスです。

 

SONY αの電子シャッター(20コマ/秒)

 
α7 IIIは、8コマ/秒のメカシャッターでは、高速で明滅するライブビューが可能ですが、連写を最速の10コマ/秒とすると画面は完全にブラックアウトし最後に撮影した写真のみが表示されます。

4.オートフォーカスのポイント

どちらのカメラも693点の像面位相差AFセンサーを備えていて、AFのエリアは全体の約93%をカバーします。違いはコントラストAFのフォーカスポイント数で、α9は25点、α7 IIIが425点に増えています。低照度で位相差AFが正しく機能しない場面では、コントラストAFのポイント数が多いα7 IIIの方が検出精度が高い可能性があります。ただ、スペック上は測距範囲の最小値はどちらも-3Evです。

α9は、AF測距点が693カ所もあるにも関わらず、積層型CMOS(Exmor RS)の処理能力により、AF・AEの演算を最大で毎秒60回。これはα7 III の10倍以上です。したがって、低照度の場合は除いて、動く被写体の追従性能などのAF精度はα9の方が上と考えられます。

α7 III
via Sony
  α7 III α9
AF方式 ファストハイブリッドAF
(像面位相差+コントラスト)
ファストハイブリッドAF
(像面位相差+コントラスト)
AF測距点
(像面位相差)
693点 693点
AF測距点
(コントラスト)
425点 25点
測距範囲 -3EV〜 -3〜20EV
シャッタースピード
(メカシャッター)
1/8000〜30秒 1/8000〜30秒
電子シャッター
(サイレントモード)
1/8000〜30秒 1/32000〜30秒
電子先幕シャッター
フラッシュ同調速度 1/250秒以下 1/250秒以下
最大連写とバッファ
(メカシャッター)
10コマ/秒(AF追従) 5コマ/秒(AF追従)
最大連写とバッファ
(電子シャッター)
10コマ/秒(AF追従)  20コマ/秒(AF追従)   
連続撮影バッファ RAWあり: 89枚
RAWなし: 177枚
RAWあり: 241枚
RAWなし: 362枚

5.電子ビューファインダーと背面モニター

ファインダーと背面モニターの性能はどちらのカメラも同じくらいですが、EVFも背面モニターも解像度がα9の方が高くなっています。

ファインダー

  α7 III α9
ファインダー EVF EVF
ドット数 236万ドット OLED 368万ドット OLED
ファインダー視野率(上下/左右) 100 % / 100 % 100 % / 100 %
ファインダー倍率 (35mm換算) 0.78倍 0.78倍

背面モニター

  α7 III α9
画面サイズ 3.0型 3.0型
ドット数 92万ドット 144万ドット
可動式モニタ チルト方式 チルト方式
タッチ操作

6.ビデオのプロファイル

動画の露出に関しては、α9には致命的な欠点があります。動画撮影にも有望なセンサー性能を持ちながら、「ピクチャープロファイル(PP)」の機能がないことです。動画撮影では、このPPの中にS-Log2やS-Log3といったログガンマの選択モードがあります。しかし、α9にはそもそもPPがないので、ガンマカーブの選択ができないなど、ビデオグラファーには残念な仕様となっています。

次に、α7 IIIには、ちゃんとS-LogsやHLG(Hybrid Log Gamma)などのビデオプロファイルがあり、センサーの性能を活用できます。

α7 III のサンプル動画(公式)

 

7.操作系の微妙な違い(ドライブモードダイヤル&フォーカスモードダイヤル)

どちらのカメラもデザインや操作性はほぼ同じです。ちょっとだけ違っているのは、α9の左側にロック機構付きのドライブモードダイヤル&フォーカスモードダイヤルがあることです。

このダイヤルの上段は「1枚撮影」や「連続撮影」などのドライブモード、下段は「シングルAF(AF-S)」や「コンティニュアスAF(AF-C)」などのフォーカスモードを切り替えられます。双方のダイヤルにロック機構が付いているため、撮影中の意図しないモード変更や、ダイヤルの連れ回りがしにくく、便利な機構です。

8.LAN端子とフラッシュ同期ポート

α9にはプロユースのインターフェースがいくつかあります。1つ目は、イメージをFTPサーバーに転送できる有線LAN(100BASE-TX)ポート。2つ目はスタジオストロボで使用できるシンクロターミナルです。

有線接続による安定したデータ通信が可能になったほか、スタジオ用の大型ストロボにも対応。報道の現場やスタジオでの使用も考慮して設計と思われますので、アマチュアであればそんなに気にする差ではありません。

  α7 III α9
映像/音声出力・デジタル端子 USB-C 3.1 Micro USB
外部マイク入力端子 φ3.5mm φ3.5mm
HDMI Type D Type D
Wi-Fi
Buletuooth
電子水準器
ホットシュー  
内蔵フラッシュ
その他   – LANポート
  (100BASE-TX)
– シンクロターミナル

9.バッテリーライフ

どちらも同じバッテリーを採用していますが、バッテリーライフはα7 III が最大で710枚、α9が650枚とちょっとだけ差があります。おそらくα9の積層型センサーの消費電力が多いことに加えて、EVFと背面モニターの解像度の差が影響していると考えられます。

ひとつ微妙な注意点ですが、α7 III にはバッテリーチャージャーが同封されていません。バッテリー1個であれば、USBケーブルと本体をつないで充電すればいいと想定しているようです。チャージャーで充電したいという方は、Zバッテリー対応の『BC-QZ1』を別途購入する必要があります。これが9,000円ほどするのでちょっとバカになりません。

  α7 III α9
防塵防滴
(使用温度範囲)
バッテリー NP-FZ100  NP-FZ100
撮影枚数
(CIPA基準)
モニター 710枚
EVF 610枚
モニター 650枚
EVF 480枚
USB充電
対応記録メディア SD×2
(UHS-II/UHS-I)
※スロット1のみUHS-II
SD×2
(UHS-II/UHS-I)
重さ
(バッテリー、
記録メディア含む)
650g 673g
サイズ
(幅x高さx奥行き)
127×96×74mm 127×96×63mm

10.価格

α7 III の実勢価格(税込み)は、ボディのみ24万円前後、レンズキット(FE 28-70mm F3.5-5.6 OSSが付属)が26万円前後と予測されています。α9は2017年5月の発売から半年以上が経過してちょっとは値段が下がりましたが、それでも40万円前後です。

どっちを買うべき?

どちらのカメラも、24MPフルサイズセンサー、優れたISO性能、4K動画、最新のオートフォーカスシステム、大容量のバッテリー、そしてコンパクトボディに豊富な操作系など、魅力的な機能はほとんど提供されています。

2つのカメラは価格差がとても大きいすが、α9にはあってα7 III にない特徴といえば、ブラックアウトフリーのライブビューで20コマ/秒の高速連写ができることです。スポーツや野生動物を撮りたい写真家なら、これは唯一無二の性能でしょう。

しかし、ほとんどのユーザーはα9ほどの高速連写でなくとも、α7 III の10コマ/秒のメカシャッターでも十分に満足するでしょう。というのも、α7 III には、最発売済みの α9やα7R IIIに搭載された最新仕様やカスタマイズ性などソニーが培ってきた技術が惜しげもなく詰め込まれているからです。操作系もほとんど差がありませんし、動画の性能はα9よりも改善されています。

特に、ミラーレス一眼の弱点とよく指摘されるバッテリーライフも、α9と同じ大容量バッテリー(NP-FZ100)が採用されて、撮影可能枚数が最大710枚とミラーレス一眼ではトップクラスの性能に改善されたことは大きいと思います。旧モデルは最大350枚と貧弱な性能だったので。

画像引用:SONY